ダイヤモンド社が提供するビジネス情報サイト『ダイヤモンド・オンライン(http://diamond.jp/)』に、昨年末から「中原淳のグローバル人材育成を科学する」という連載が始まっています。著者は東京大学 大学総合教育研究センターの中原淳(なかはら・じゅん)准教授です。日本企業の「グローバル人材育成」はどうも問題があると認識され、そもそもグローバル人材育成とは何か?どのように実現するものなのか?形だけでなく、真の意味で企業の成長につながる「グローバル人材育成」のあり方を見直し、考えていくことをテーマとした連載です。


 そのなかでも特に興味深かったのは、第2回「「グローバル人材」採用を多くの企業が失敗する理由」でした。東京大学中原淳研究室、京都大学溝上慎一研究室、電通育英会との共同調査研究の結果によれば、「機会があったら海外で働いてもいい」と答えた大学生は、37%だったそうです。中原准教授は「ウォシュレット依存症」と呼んで、「残念ながら、今の大学生たちは、やはり「内向き」というか、日本の便利な生活を捨てられない、というところがある」と述べられています。


 しかし、ここで考えさせられたのは、この傾向は何も学生のみならず、受け入れる会社の社員の方々にも当てはまるのではないか、ということです。同じ質問を社会人の方々にしてみたら、結果はどうなるでしょう。はたして37%より確実に高いだろう、と言い切れるでしょうか。


 また、「海外で働きたい」と答えた学生とそうでない学生との違いはどこにあるのかについては、先ほどの大学生調査結果によれば、「日常的に、留学生や外国人教員とのコンタクトがあるかどうかが、重要」で、「「半径3メートルの日常的な異文化体験」が鍵となっている」ということです。要するに授業、サークル、研究室、バイト先など、大学生が過ごしている身近な人のなかで外国人との接触があるかないか、ということのようです。それを確認する手段の一つに、スマホを挙げられています。スマホのなかには、携帯電話の連絡先、LINEの連絡先、Facebookのお友達など、その人が持つ「ソーシャルネットワーク」が可視化されており、そのなかに外国人の名前もある人、つまり、日常的に異文化体験ができそうな場に出かけていたりして、外国人の友人・知人との交流がある人は、「海外で働きたい」という気持ちを持つ人が多い、ということになろうかと思う、と述べられています。


 そして連載は、企業が「グローバル人材」を育成したい場合に、「海外で働きたい、機会があれば海外に行ってみたい、海外でチャレンジしてみたい」といった「動機」を持った人材をいかにして採用するか、というところが第一ステップになると言えそうだ、と結んでいます。


 連載の内容に異を唱える部分は、まったくありません。ですが、「半径3メートルの日常的な異文化体験」をこれから入社する学生にのみ求めるのではなく、そうした「グローバル人材」を受け入れる上司・先輩方も同時に、同様の体験を経る必要はあるのではないかと思います。そうして会社は「グローバル企業」になっていくと思いますし、プライベートではなかなか「半径3メートルの日常的な異文化体験」を経るのが難しいのであれば、まずは外国人を社内に受け入れてみることで、『半径3メートルの異文化』を作ることから始めればいいのではないかと思います。


 いま一度、ご自身の携帯電話を確認してみてください。外国人の方の登録は何名ありましたか? 異文化への理解や配慮が出来てこそ、会社は「グローバル企業」になり得るとしたら、まずは半径3メートル以内で、外国人の方々とともに働いてみることも並行した第一ステップにしてみてはいかがでしょうか。